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すばる望遠鏡で巡る宇宙の旅
研究ハイライト
太陽系外惑星の直接撮影
1995年に最初の太陽系外惑星が発見されて以降、現在までに数千個以上の太陽系外惑星が見つかっています。しかしそのほとんどは間接的な観測で見つかった天体です。一方で、すばる望遠鏡は太陽系外惑星を直接撮影する性能に秀でており、地球から約 60 光年離れた太陽型の恒星を周回する惑星 GJ 504 b を、世界で初めて直接撮影法で検出することに成功しました。この惑星は、惑星の明るさから質量を推定する際に生じる不定性が小さく、質量推定の信頼度が極めて高いものです。これまで直接撮影された惑星と比較して、最も暗くかつ最も温度が低いことが分かっており、「第二の木星」の直接撮影にこれまでで最も近づいたと言える成果です。
プレスリリース:すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功
ダークマターの広域地図作り
すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam を用いた暗黒物質 (ダークマター) の広域探査が進められています。写し出された無数の銀河の形を精密に計測し、重力レンズ効果という現象を利用することで、手前にある暗黒物質の分布を描き出すのです。2013年には 2.3 平方度にわたる天域における暗黒物質の分布を明らかにし、銀河団規模のダークマターの集中がこの天域に9つ存在することを突き止めました。暗黒物質分布の広域探査は宇宙膨張を支配する「暗黒エネルギー」の強さや性質を調べる上でカギとなります。観測天域は今後 1000 平方度以上にまで広げられ、暗黒物質分布とその時間変化から宇宙膨張の歴史の精密な計測に迫ります。
プレスリリース:すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam が描き出した最初のダークマター地図
重力波天体が放つ光の観測
すばる望遠鏡は、米欧の重力波望遠鏡が2017年8月17日に観測した GW170817 の光赤外線追跡観測を行い、重力波源の光赤外線対応天体を捉えました。さらに、その明るさの時間変化を追跡することにも成功しました。これは重力波源が電磁波で観測された初めての例です。重力波信号の特徴から GW170817 は中性子星同士の合体であると考えられていますが、すばる望遠鏡などの観測結果は、中性子星合体に伴う電磁波放射現象「キロノバ」の理論予測とよく一致しています。つまりすばる望遠鏡は、金やプラチナなどの重い元素の宇宙における合成現場を捉えたのです。
プレスリリース:重力波天体が放つ光を初観測 ―日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場―
ハワイ観測所長あいさつ
人は星を見て、時に限りない郷愁の思いに駆られることがあります。私たち人類は、この宇宙に生きており、この宇宙が私たちを生みました。このことは、紛れもない事実であり、星を眺めるとき、私たちは無意識のうちにこのことに思いを馳せるのかもしれません。
すばる望遠鏡は、1999年にファーストライトを迎え、2000年より共同利用を開始しました。すばる望遠鏡には、高精度に磨かれた主鏡、それを支える261本の能動支持アクチュエーター、気流を制御し陽炎を吹き払う円筒型ドームなど、天体の高解像度観測を可能とするための様々な工夫が凝らされています。さらに、その堅牢な架台構造によって、主焦点に観測装置を装着できる機能を実現しています。主焦点は視野が広く取れるという特徴を持ちます。これらの工夫により、すばる望遠鏡は他の大型望遠鏡と比較して圧倒的に広視野、かつ高解像度の観測を行うことができます。現在、主力観測装置として活躍中の超広視野主焦点カメラ (Hyper Suprime-Cam; HSC) は、まさにこうしたすばる望遠鏡の特長を活かした装置であり、その圧倒的な撮像能力を活かして、宇宙論、銀河の形成・進化から太陽系内天体探査に至るまで、幅広い研究分野で活躍しています。HSC による成果をさらに発展させるため、2400個の天体を同時に分光観測できる、主焦点超広視野分光器 (Prime Focus Spectrograph; PFS) が現在開発中であり、近い将来、すばる望遠鏡の主焦点で稼働する予定です。一方、すばる望遠鏡の高解像度観測性能を極限まで活かして、補償光学を活用した観測装置群も活躍中で、系外惑星や星・惑星形成過程の研究に威力を発揮しています。
人が星を見るときに感じる憧れ。天文学者たちはそれを突き詰めて、科学の目で宇宙の謎を解明しようと日夜奮闘しています。国立天文台ハワイ観測所はそうした天文学者たちの奮闘に応えるべく、すばる望遠鏡を維持整備し、新たな観測装置の開発を行い、世界第一線の光学赤外線天文台として、これからもより一層の活躍を目指します。