国立国語研究所

国立国語研究所(NINJAL)は1948年に創設された日本の「ことば」に関する総合的・科学的な研究を行う機関です。
日本語学や言語学、日本語教育研究と呼ばれる分野を中心に、調査、実験、データサイエンス・AI言語処理を駆使して言語を分析し、さまざまな観点からことばを研究しています。その成果は、ことばのデータベースの構築、ことばの保存と継承、日本語教師の研修や教材開発などといった形で社会に還元されています。
とても身近にあるけど謎に満ちあふれている「ことば」。その研究の世界を少しのぞいてみませんか。

国立国語研究所

国立国語研究所外観

国立国語研究所外観

誰もがオープンに利用できる
データベースの構築

あることばが、誰に向けて、どのような場面で、どのような頻度で、どのように使われているのかといった「ことばの実態」を個人で調べようとしても、昔は困難で長い時間がかかりました。けれども現在では「コーパス」を使うことで、誰でも短時間で調べることが可能になりました。コーパスとは、言語研究に必要な情報(品詞など)を付与したことばを、検索可能な形で大量に集めたデータベースです。

現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)「少納言」

現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ) 「少納言」(申込不要、無料)
https://shonagon.ninjal.ac.jp/

例えば、「日本」には「ニホン」と「ニッポン」という二つの読み方がありますが、実際にはどちらが多く使われているのでしょうか? テレビのニュース番組では「ニッポン」をよく耳にします。「ニッポン」が多いのでしょうか?
「日本語話し言葉コーパス」(750万語規模)で調べてみると、「ニホン」が7,851回使われていたのに対し、「ニッポン」は195回しか使われていませんでした。つまり、日常の話し言葉では「ニッポン」よりも「ニホン」が圧倒的に多いということです。コーパスで調べてみると、メディアの印象が強く残りがちな私たちの「認識」は、必ずしも「実態」とは一致していないことが分かります。

もっと知りたい方は、以下の動画をご覧ください。

「コーパスとは?」前川 喜久雄
(国立国語研究所 教授)

日本の消滅危機言語の保存と継承

動物と同じように、言語にもたくさんの絶滅危惧種があります。そうした「誰も話さなくなって世界から消えていきそうな」言語のことを、消滅危機言語と言います。ユネスコが公表した世界2,500の消滅危機言語のリストには、日本で話されている8 つの言語―アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語―が含まれています。これらだけではなく日本各地の伝統的な方言もまた、消滅の危機にあります。言語の記録保存と継承保存とはどのように行われるのでしょうか。次の動画に答えがあります。

講義「消滅危機言語の記録保存と継承保存」(山田真寛)/言語学レクチャーシリーズ(試験版)Vol.21

国語研ではこれらの言語を記録し、その価値を訴え、継承活動を支援するプロジェクトを行っています。また、国語研の枠を超えた取り組み例としては、国語研の研究者が参加するプロジェクト「言語復興の港」が、クラウドファンディングにより琉球諸語の絵本を出版しています(島人の朗読音声付き)。

琉球諸語の絵本

言語生活の実態を調べる
世界最長の調査

「言語生活」とは、「食生活」と同じように、われわれが日常でどのようなことばを、どのように使うかといった、「ことば」をめぐるあらゆることを指します。国語研は、私たちが普段は意識していないことばを見つめ、その実態の記録、保存、記述に取り組むことに力を入れています。例えば、こういった研究があります。
日本にはさまざまな方言がありますが、現在では、全国どこでも「同じことば」を使うことでコミュニケーションが取れます。しかし、この「共通語」が全国に普及したのは比較的最近のことです。
山形県鶴岡市において、国語研は60年にわたり共通語化の進み方を調べました。約20年間隔で無作為に選んだ方を調査すると同時に、個人の変化を調べるために、以前の調査対象者にも再調査(追跡調査)を行っています(コウホート系列法)。初回調査(1950年)では15歳だった対象者が第4回調査時(2011年)には76歳になっています。こうした人の一生の大半を追いかける形式の調査としては、世界でも古く、定期的なランダムサンプリング調査と、個人を追いかける追跡調査を組み合わせた調査としては世界最長、ということになります。

多文化共生社会を支える日本語教育

日本語教育関連のデータリンク集が充実したサイト「にほんごでつながる」

日本語教育関連のデータリンク集が充実したサイト
「にほんごでつながる」
https://www2.ninjal.ac.jp/jll/top.html

グローバル化が進み、少子高齢化や労働人口の不足などに直面している日本では、外国の方と共に暮らしていく「多文化共生社会の構築」が課題になっています。国語研は前世紀から、日本語教育の人材育成や第二言語習得に関する研究に力を入れています。近年では、「多言語母語の日本語学習者横断コーパス」(I-JAS)を構築しました。国内外の異なる12言語の母語を持つ日本語学習者1,000 人の発話データと作文データを横断的に収集し、収録しています。

小学生から楽しめる国語研の
ウェブサイト・動画

ニホンゴ探検2023

「ニホンゴ探検」は国語研恒例の人気イベントです。今年は国語研が過去に公開した動画コンテンツを厳選し、「これは絶対に見逃せない」というものを取り上げて、Web公開で皆さんにお届けしています。

ぷらっと国語研

「研究者って日常的に何をしているのだろう?」「研究者って研究する以外にどんな趣味があるのだろう?」―― みなさんは疑問に思ったことはありませんか?
「ぷらっと国語研」は、研究室を訪問して展開されるさまざまな雑談やエピソードをお届けする動画シリーズです。
あの先生は、紅茶派?コーヒー派? 世界大会2位の特技って何? 言語学者なのになぜピラミッドの発掘に参加したの? 休日の過ごし方は? などなど、興味深い内容が盛りだくさんです!

ぷらっと国語研
  • 第1回
    中川奈津子先生の研究室を覗いてきました!

  • 第2回
    「デジタル」と「人文知」を跨ぐ:宮川創先生の部屋をご紹介

  • 第3回
    師弟漫才!石黒圭先生の研究室を訪問しました

  • 第4回
    辞書編纂者の日常を覗く:柏野和佳子先生の研究室を訪問(前編)

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