気温や光、生態系、そして他者の動きやことば。人間や生物に影響をおよぼす“世界”をひもといてみよう。
10:45〜11:05
極域の海洋環境・
プランクトン・水産生物の
変化
平譯 享
(国立極地研究所 教授)
北極と南極の海では、地球温暖化の影響により、急激な海氷面積減少などの環境変化が起こっています。その変化は極域の海に生息する植物プランクトンや動物プランクトンの分布や生産に影響をおよぼし、海洋生態系全体に波及しつつあります。特に北極海とそこに隣接する海域では、水産生物(魚介類)の分布の変化が懸念されています。本発表では、これらの変化の実態を説明するとともに、日本への影響についても概説します。
11:05〜11:25
バイオロギングが
明らかにする
海洋動物の生態、生理、進化
渡辺 佑基
(総合研究大学院大学 教授)
動物の体に機器を取り付け、行動パターン、体内の状態、周囲の環境などを計測する手法をバイオロギングと呼びます。1960年代に細々と始まったこの手法は、近年、デジタルデバイス技術の発達とともに大きく発展しました。私は2000年代の始めより、この手法を用いて海洋動物(ペンギン、アザラシ、サメなど)の行動生態や生理を研究しています。本講演では、私の研究例をいくつか紹介しながら、バイオロギングの魅力について話したいと思います。
11:25〜11:45
概日時計の
これまでとこれから
秋山 修志
(分子科学研究所 教授)
シアノバクテリアの概日時計の今日までの進化(これまで)と未来に向けた進化(これから)を想像してみたいと思います。
11:45〜12:05
運動同調と社会形成
戸松 彩花
(生理学研究所 特任准教授)
流れる音楽のリズムに乗る、会話する友人と歩調が合うなどは、知らず知らずのうちに起こる日常的な光景ですね。でも、これはなぜ、どのようにして起こるのでしょうか?「なぜ」に対しては、他者の動きやリズムに同調(同期)することが、良好な対人関係や集団内協調の醸成に役立つことを示す研究がいくつもあります。一方「どのようにして」は、まだよくわかっていません。シンポジウムでは、この身体運動の同調という現象に注目し、その生成基盤を明らかにするために今おこなっている研究をご紹介したいと思います。
12:05〜12:25
翻訳研究から
「あいだ」への想像力を育む
片岡 真伊
(国際日本文化研究センター 准教授)
文学や文化、知識が異なる言語・文化圏にうつされる時、その翻訳過程では、一体何がおきているのでしょうか。「翻訳」というフィルターを通してみると、そこには様々な「あいだ」のかたちが浮かび上がります。この発表では、日本文学の英訳や文化の翻訳などの具体例を交えつつ、研究を通して明かされる「あいだ」の実際の姿を紹介したいと思います。
パネルディスカッション
12:30〜13:10
ファシリテーター
飯田 綱規
(名古屋大学 サイエンスコミュニケーター)
原子・分子から遺伝子、研究施設まで。資源の可能性とリスクはなにか。そしてうまく付き合うには。
14:10〜14:30
作物野生遺伝資源の
食糧資源化
佐藤 豊
(国立遺伝学研究所 教授)
地球温暖化は持続的な作物生産を困難にしています。我々の研究グループは、「作物野生遺伝資源の新奇食糧資源化」への挑戦を通して、地球環境変動に対応できるストレス耐性農作物を迅速に開拓するプロジェクトに取り組んでいます。遺伝的な多様性が減少し環境変動や病害虫に対して脆弱になった現在の作物に代わる新たな食糧資源を開拓する試みを紹介します。
14:30〜14:50
窒素利用の便益と
窒素汚染の脅威という
ジレンマ
林 健太郎
(総合地球環境学研究所 教授)
窒素はタンパク質に必須の元素ですが、大気を満たす窒素ガス(N2)は安定で直接に利用できません。人類は、N2から反応性窒素(N2を除く窒素化合物、Nr)を合成する技術を獲得し、Nrを肥料や原料に用いて繁栄を築きました。一方、人間活動は大量のNrを環境に排出させ、地球温暖化、成層圏オゾン破壊、大気汚染、富栄養化などの窒素汚染を引き起こしています。窒素利用の便益の確保と、窒素汚染の脅威の解消が、人類の持続可能性の鍵となるのです。
14:50〜15:10
量子ビームでみる水素
大友 季哉
(物質構造科学研究所 教授)
水素は宇宙でもっとも多く存在する元素で、地球の環境の源であり、生命活動の基盤であり、私たちが生きていく上で不可欠な元素です。また、水素は持続可能な新しいエネルギー源として注目されているのはみなさんご存知のとおりです。水素を「みる」=観測することにより、水素のさまざまな振る舞いや役割を明らかにすることがますます重要になっています。一方で、陽子1個、電子1個からなる最も単純な元素である水素は、最も「みる」ことが難しい元素でもあります。KEK物質構造科学研究所で行なっている量子ビームを使った水素の観測による研究についてご紹介します。
15:10〜15:30
超伝導空洞の
技術革新が導く
加速器技術の社会応用
本田 洋介
(加速器研究施設 准教授)
20世紀の自然科学の発展のなかで、加速器は重要な役割を果たしてきました。素粒子実験の分野はもとより、放射光源や中性子源の施設は幅広い研究分野において欠かせない研究ツールの一つになっています。 これまでに、最先端の大型加速器施設の性能向上を目指す開発研究の中で、新しい技術が生まれ、社会応用に繋がった例もあります。本講演では、近年著しく研究が進んでいる、超伝導加速空洞の効率化に関する技術開発とその社会応用への展望について紹介します。
15:30〜15:50
安全・安心な水素社会実現に
貢献する能代ロケット実験場
の水素試験技術
小林 弘明
(宇宙科学研究所 教授)
ロケット燃料である「水素」に関するJAXAの技術・知見・地上設備を社会に還元すべく、様々な高圧水素/液体水素機器の開発試験や安全基準策定のための爆発/漏洩実験などに取り組む能代ロケット実験場の活動について紹介します。また、実験場と地方公共団体のタイアップにより地方創生/町おこしに貢献する状況についても紹介します。
パネルディスカッション
15:55〜16:35
ファシリテーター
飯田 綱規
各研究機関のボタンをクリックすると、紹介ページをご覧いただけます
人間文化研究機構
人間文化研究機構(NIHU)は、国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所及び国立民族学博物館の6つの人間文化にかかわる大学共同利用機関によって構成されています。各機関はそれぞれの設立目的を果たしながら基盤研究を進めるとともに、学問的領域を超えて協働し、自然環境をも視野に入れた、人間文化に関する総合的研究拠点を形成しています。また、膨大な文化資源に基づく実証的研究、人文学の総合化を目指す理論的研究などはもとより、自然科学との連携も含めた新しい研究領域の創成に努め、人間文化に関わる総合的学術研究の国際的拠点を目指しています。
自然科学研究機構(NINS)は、宇宙、エネルギー、物質、生命等に係る大学共同利用機関(国立天文台、核融合科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所)と直轄の2つのセンター(アストロバイオロジーセンター、生命創成探究センター)を設置・運営し、自然科学分野の国際的研究拠点として、世界を牽引する最先端研究を推進するとともに、全国の大学等の研究者に共同利用・共同研究の場を提供しています。これらの共同利用・共同研究を通じて、参加した大学等と大学共同利用機関の成果が生まれ、大学等の研究力強化と新たな研究分野の創成に貢献しています。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、最先端の大型粒子加速器を用いて、素粒子や原子核の研究から原子や分子レベルでの物質の構造や機能の研究、生命体の生命活動の研究まで、幅広い基礎科学の研究を行っています。高エネルギー加速器とは、電子や陽子などの粒子を、ほぼ光の速さまで加速して、高エネルギーの状態を作り出す装置です。 この高エネルギー状態から作られる素粒子の世界を研究すると、誕生直後の宇宙の様子を探ることができます。 また、加速器が作る光や陽電子、中性子、ミュオンなどの量子ビームは、倍率の高い顕微鏡として、これまでに見ることができなかった物質の構造や、生命活動の研究を行うことができます。
情報・システム研究機構(ROIS)は、大学共同利用機関である国立極地研究所、国立情報学研究所、統計数理研究所、国立遺伝学研究所の4つの研究所と直轄の1施設で構成されています。21世紀の重要な課題である生命、地球、自然環境、人間社会などの複雑な問題を「情報」と「システム」という視点から捉え直し、データサイエンスを推進することにより分野の枠を越えた研究を行い、その解決を目指しています。2016年度にはデータサイエンス共同利用基盤施設(ROIS-DS)を新たに設置しました。私たちは、多くの研究機関や大学、さらに企業や一般にも設備と情報を公開し、オープンサイエンスの活動を進めることにより、様々な社会課題の解決に挑戦し続けます。
日本の宇宙科学研究の核でもある宇宙科学研究所。
その宇宙科学研究所を知ることは、日本の宇宙科学を知ることにもなります。
また我々は、一般の人々が宇宙科学に理解と関心を深めていただけるよう、積極的に活動していきます。
総合研究大学院大学(総研大)は、大学共同利用機関等との緊密な連係及び協力の下に、世界最高水準の国際的な大学院大学として学術の理論及び応用を教育研究して、文化の創造と発展に貢献することを理念に、1988年に我が国最初の独立大学院大学として創設されました。この理念に基づき、基礎学術分野において国際的に通用する高度の研究的資質を持つ広い視野を備えた研究者の育成を目的とし、学融合により従来の学問分野の枠を越えた国際的な学術研究の推進並びに学際的で先導的な学問分野の開拓を目指します。
いずれも参加無料・申込不要です。
会場に直接お越しください。
いつでも入退場できます。
日本科学未来館 7階 未来館ホール
東京都江東区青海2-3-6ニコニコ生放送で研究者トークを同時配信しました。現在、全編アーカイブ公開中です。どなたでもご覧になれます。
イベント名
日 時
会 場
開催趣旨
主 催
後 援
ポスター
大学共同利用機関協議会
広報ワーキンググループ事務局
( 国立国語研究所 )
〒190-8561 東京都立川市緑町10-2